古き伝統を守り新しき挑戦を続ける老舗酒蔵

アーケードの商店街にあり古い商家のようなたたずまいの平井商店。正面の大きな暖簾で隔てられた奥は、実は日本酒の仕込み蔵になっています。冬、酒造りのシーズンにお店に入ると、よい香りが漂ってきます。銘柄は「浅茅生（あさぢを）」といい、後水尾天皇の皇子・聖護院宮道寛親王から賜った和歌から命名されました。

　創業は万治元年（１６５８年）。当時大津は琵琶湖の湖上交通の要衝であり、物流の中継地として栄えてきました。また「大津酒」という言葉があるほど酒造りも盛んでした。

　それから３５０年余り、代々襲名してきた八兵衛の名前を継ぐ当主の平井さんは１７代目、そして娘の弘子さんが１８代目の修行中です。平井さんは商社マンとおして海外勤務を経験した後に家業を継ぐことを決意し、自ら杜氏の修行を始めました。今でこそ滋賀では珍しくない蔵元杜氏の先駆けともいえます。

　夏でも新酒を出す「湖雪（フーシェ）」は炭酸のピリリとした生のにごり酒。日本酒を和食以外合わせて飲んでほしい、という平井さんの想いから生まれました。

　また、食卓を上質の器で演出することを提案し、店頭には酒ビンの隣に作家ものの酒器が並びます。まさに古き伝統を新しい感覚でともに活かす老舗です。